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拒絶との対話

―――君は神様を信じない。もちろん君は僕のことも信じない。愛したいと思っても避けられてしまう。

「誰もがきみの言うように何かを信じられるわけじゃない。それにきみはまったく優しくなくて、むしろ自分だけの正しさを押し付けてぼくを否定するばかりだ。それで信じろといわれたって無理だ」

―――いや違う。僕は愛したいし優しくしたいと思っている。でも、君はそれを信じないし、そうさせてくれないだけだ。

「ぼくはこのままでかまわない。ぼくときみは今でも十分に友達だと思っている。そのことがなぜいけないんだ」

―――僕の心の底にも、君の心の底にも、嘘がある。もし仮に僕たちのどちらかが死んでも、そこにはきっとあるべき痛みがない。僕はそれが怖い。

「それは仕方のないことなんじゃないのか。ぼくもきみも、いや、少なくともぼくは、そういう人間だ」

―――そんなはずはない。きっと本当のものがあるはずだ。ただそれに気がついていないだけで、僕の中にも君の中にも、そんな「仕方ない」なんて話よりもっと大事なことがあるんだ。

「それを求めているのはきみであってぼくじゃない。なのに、きみはぼくに何かしろと要求ばかりする。そして、それが受け入れられないとなると、今度はぼくの存在そのものを否定しようとする」

―――だって、それができるのは君自身だけなんだ。君自身が動かなければ、僕にはどうすることもできない。それに、僕が否定しているのは君の存在じゃない。君を動かすために必要なら、なんだって言おうとするだけだ。

「でも、ぼくはきみのいう『それ』を望んでいない。きみがどうしてこのままじゃいけないっていうのかわからない」

―――なぜいけないのかは、君が自分で考えなきゃわからないことなんだ。

「それはただ勝手なだけにしか思えない。要求はする、否定もする、でも、全部ぼくがやらなきゃいけないときみはいう。ぼくは今のぼくのままでいちゃいけないのか」

―――君は君のままでいてくれなきゃ困る。だけど、今のままでは困る。

「ぼくは今のままでも困ってない。もしきみが『それ』を望むっていうなら、ぼくはきみのためにすることになるわけだけど、きみはぼくのために何をするっていうんだ」

―――僕の真実にかけて友達でいたいと思っている。

「そんなことを言うけど、きみはぼくのことを否定する一方で、まったく認めようとしてない。ぼくにはそれしか見えない」

―――それだけじゃないことをどうやったら信じてもらえるのか。

「きみはきみ自身のために、ぼくに対して『それ』を望んでいるだけに見える。きみの言葉はひどく利己的で、きみのいう愛とか優しさとはまるで逆のことにしか思えない。だからぼくは信じろといわれても信じられない」

―――違う。エゴイスティックなことだけど、利己的なことじゃない。僕は君にそのことを知ってほしいと本当に思っている。

「どう違うのかわからない。それはきみだけが望んでいることで、ぼくが望んでいないことなんだから、結局は同じじゃないのか」

―――だから、同じだと思われたままにしておきたくない。

「きみはさっきから、ぼくがこのままじゃ気に入らないとしか言ってないように聞こえる。そんなことを言われても、ぼくはこういう人間なんだ」

―――君が僕のことを嫌っていたり、本当にどうでもいいと思えるような人間だったらこのままでもいいかもしれない。でも、僕はそんなふうに思えないし、そうしたくもない。

「きみは、ぼくがきみの望むことにに応えなかったら、ぼくから離れていくだけだと思う」

―――君のことをどうでもいいと思ったりしたくない。友達をやめるつもりもない。だからそれが僕の望みだ。

「でも、やっぱりきみみたいな人間ばかりじゃない。ぼくはきみとは違う人間なんだ。きみはそれが許せないという」

―――そうじゃない、違う人間だけど、互いに同じ気持ちを持つことはできると思っているだけだ。

「その気持ちはきみのものであって、ぼくのじゃない」

―――簡単なことなんだ。信じさえすればいいだけなんだ。

「それはただの押し付けじゃないのか。やっぱりぼくが『それ』をしなきゃいけない理由がわからない」

―――好きだとか大事だとかいうことに、理由なんかない。

「でも、きみは、きみにとって大事なことをを押し通すためなら、たとえばぼくを傷つけてもかまわないと思っているだけに見える」

―――君にとっても大事なことであるはずだと思っているだけだ。ただ僕の利得のために君を傷つけたいとなんて少しも思ってない。

「ぼくにとっての大事なことはきみとは違う。ぼくは現に傷つけられているし、そんなことのために傷つきたくない」

―――大事なことだと思うからこそ、どうしても伝えようとせずにはいられない。

「もしきみが友達でようとしても、今のぼくを否定され続ければ、ぼくがそれに耐えられなくなって離れてしまうかもしれない。きみがそうしたくないように、ぼくだってそんなこと望んでない。きみのやっていることは身勝手で傲慢だ」

―――それなら、どうやって伝えればいいんだ。

「それはぼくのほうこそ聞きたい。ぼくがこのままきみと友達でいるってことはできないのか。ぼくはただそれだけでいいのに」

―――僕だってちゃんと友達でいたい。だからこそ、このままじゃ駄目なんだ。

「それがだめだといってるのは、きみの一方的な要求でしかない」

―――だから、それに応えてほしいと思っている。それに、友達から応えてもらうことは一方的なことなんかじゃない。僕は、自分の持てる全ての真実でそれに応えたい。

「だから、それはきみにとっての真実でしかない。ぼくにとっての真実は違う」

―――君にとっての真実っていったいなんだ。

「それは言葉で言わなくちゃだめなものなのか」

―――駄目かどうかじゃなく、少しでも言葉でも言うことはできないものなのか。

「少なくとも、きみの求めるようには無理だ」

―――それなら、僕の求めるようにではなくてかまわないから、それを教えてくれないか。

「だから、さっきから言っている。たとえば今のまま友達でいるってことだとかだってそうだ」

―――それは君にとって本当にそんなに大切なことなのか。今のままってことが君にとっての真実なのか。

「今のままがいいかどうかはわからないけど、少なくともきみの望むようにかわることはできない」

―――少なくとも僕の望むようにはなれない、というのが君にとっての真実なのか。

「そうじゃない。そういうことなら、ぼくにはきみのいう真実なんて何もないのかもしれない」

―――いや、僕は君にとっての真実が知りたいだけだ。

「だから、それはぼくにはないと思う」

―――僕はそんなことはないと思っている。

「それじゃ、きみにとって答えは最初からひとつしかないじゃないか。ぼくにはぼくの真実があるはずだ。しかも、それはきみにとっての真実と同じものでなきゃいけない。きみのいてることはそういう話じゃないか」

―――そうじゃない。君にとっての真実は君だけのものだ。

「だから、きみがいう真実ってのはぼくにはない」

―――それは、本当に大切なものがないってことなのか。

「そんなことはない。でも、さっきからいくらそれを言ってもきみが納得しないだけだ」

―――そうじゃない、僕は納得させてほしいからこそ、それが本当に君の真実なのかを確認しているだけだ。ところが、君は、僕が「本当にそうなのか?」と聞くと、曖昧な答え方をして、はっきりそうだと言ってくれない。

「真実ってそんなに簡単にはっきり言えるものなのか」

―――本当に大事なことだったら、そんなにも曖昧になるはずがないと思う。

「だとしたら、やっぱりきみが思うような『本当に大事なこと』ってのは、ぼくにはない。でも、ぼくにだって大事なものはあると思う。それまできみに否定されたくない」

―――否定するつもりなんかない。ただ知りたいだけだ。

「だから、やっぱりわからない。あるかもしれないし、ないかもしれないとしか言えない。それに、そもそも真実ってなくちゃだめなものなのか」

―――駄目とか良いとかじゃなく、君自身も言ったように、それは君にもあるはずだと思うし、あるなら知りたいと思うだけだ。

「そういう意味でなら、やっぱりないと思う」

―――単純に、君とって何が大事かってだけなんだ。それが口にできないのは、ないんじゃなくて、君自身に見えてないだけなんじゃないのかと思う。だから、僕はそれを君自身が知るべきだと思う。

「なんで知らなきゃいけないのかわからない。知らなくてもかまわないじゃないか」

―――自分にとって大事なことがなにかわからないというのは、不幸なことだと思うからだ。

「べつにそれで不幸だと思ったことなんかない」

―――それは、自分には大事なことが何もないと思い込んでいるからだ。

「どうしてそんなことがきみに言えるのかわからない。少なくとも、ぼくは君のいうとおりだとはまったく思わない」

―――つまり、大事なことがないと思っているわけじゃない、ということだろうか。

「そうじゃなくて、あると思うけど、もしなくてもそれが不幸だとは思わないということだ」

―――それは、大事なものがないと言ってるのと同じことだ。でも、本当にないんじゃなくて、君が自分をちゃんと見てないから気づかないだけだ。

「さっきから、なんできみがそんなことを一方的に決め付けられるんだ。きみはぼくじゃない、違う人間なんだから、そんなふうに断定するのはおかしい」

―――生きている人間に、本当に大事なことや譲れないことがまったくないなんてことは、ありえないと思うからだ。そうでなければ、たとえば今、君が「はっきりわからないけどあるはずだ」と言いたくなる理由がない。

「だから、あるかもしれないけどはっきりわからない。だけど、そこまではっきりさせなきゃいけないときみがいう理由がわからない」

―――その理由を知るためにも、自分の大事なものは確かめてみるべきだと思う。

「それがきみにとっては大事なことなのはわかるけど、ぼくはべつに知りたいと思わない」

―――僕は逆に、君も自分にとって大事なことがあるのにそれを知らないままでもいい、というその理由こそがわからない。

「そんなに簡単に『これが大事なことだ』って言えるとは思わないからだ」

―――簡単だなんて思っていない。むしろ、自分にとって大事なことを知るのはものすごく大変なことだと思っている。

「だったら、きみみたいに簡単に『ある』って言えることこそおかしい」

―――僕は簡単に言ってるつもりなんかまったくない。自分にとって大事なことについては、全力で言っているつもりだ。

「だから、きみはそうかもしれないけど、ぼくにとっては、これが大事なことだと断定的に言えるような、そういうものじゃない」

―――「そういうものじゃない」かどうかだって、ちゃんと確かめてみなければわからないはずだろう。

「そもそも知らなくてもいいと思うし、どうしてそういうありかたが許容できないのかわからない」

―――知らなくてもいいと思うのは、まだ君がそれとちゃんと向き合ってみていないからだ。大事だと思うからこそ、理由もなく無用だといわれたって納得できない。

「無用だなんていってない。ぼくはきみがそれを重視していることを否定しない。なのに、きみはぼくがそうでないことを否定しようとする」

―――自分にとって大事なことを知るべきだと言われることは、君にとって存在の否定になるのだろうか。それは、そこまで受け入れがたいことなのだろうか。

「そうじゃない。きみが、そうでなければ駄目だ、みたいにいうからだ」

―――僕の言い方が悪かったのであれば済まないと思う。でも、それとは別に、君自身のために考えてみるというわけにはいかないだろうか。

「だから、ぼくにはきみが納得するような答えは返せない」

―――僕のためじゃなくて、君自身のためにだ。

「ぼくの答えを聞きたがっているのはきみなのだから、ぼく自身のためではなくてきみのためだろう」

―――誰のためかなんて問題じゃないだろう。それに、君が考えたことは誰がなんと言おうと君自身のものだ。

「だから、さっきから考えていっているし、それをいくらきみに話しても、きみはちゃんと考えていないといって納得しないだけだ」

―――君がいま本当に自分にとっての大事なことと向き合おうとしているかどうかは、君自身が知っているはずだ。

「それはぼくの問題であってきみの問題じゃないだろう」

―――なんでそうやって隠したり避けたりしようとするのか、僕にはわからない。

「隠しているつもりはない。ぼくにはきみが求めるようなものがないだけだ」

―――自分にとって大事なものを本気で考えてみてくれと言っているだけだ。

「何度もいうけど、ぼくはそれを必要としていないし、きみにいくら求められても望むような答えは返せない」

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